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高齢者の低栄養を予防するためには?現役管理栄養士が詳しく説明します。

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こんにんちは。

管理栄養士の小林です。

今回は表題通り高齢者の低栄養を予防するための食生活について説明をします。

高齢になると、気付かないうちに栄養が足りない状態になることも少なくありません。

食事が不十分なことが主な原因ですが、それはさまざまな理由があります。

例えば、毎日食事を作っていた妻に先立たれた、病気の食欲が湧かない、しっかり咀嚼することができないなど。

低栄養予防を心掛けていないと、気付いたら痩せていたということも珍しくありません。

そんな皆さんの日々の食生活に対する問題点、疑問、不安を少しでも解消できたらと思います。

 

 

  

 

 

食べるということ

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私達は食事を通して、活動するためのエネルギーを補給しています。

同時に五感を働かせ、目で楽しみ、鼻を効かせ、口を使って味わっています。 

食事は栄養バランスや盛り付けに加え、よく噛むことが大切です。

歯・舌・ほお・のど・顔の筋肉を動かし、よく噛むことで栄養は吸収されやすくなります。

噛むことで唾液の分泌も多くなり、食物と混ざりあって飲み込みやすくなります。

また、唾液には口の中を清潔に保ち、消化機能を助け、体の機能を高める働きもあります

人間は口から食べる動物です。

食べることは単に栄養を補給するだけでなく、唾液や胃液を分泌し体内の消化器官を呼び起こします。

また、脳が刺激され、「おいしい」「うれしい」という人間らしい感情をわかせます。

口から食べることは、体も脳も活性化され、生きる喜びと楽しみをも味わえる、人として極めて意義のある行為なのです。

 

嚥下機能について

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私たちは食物を口に入れると同時に、食べやすくなるように小さく歯で噛み砕いています。

噛み合わせに問題があるなどうまく噛み砕けないときには、咀嚼(噛み砕くこと)力を補うために、食材を軟らかく煮たり、食べやすく切ります。 

噛み砕き食べやすい大きさになった食物は、唾液の力を借りて食塊(飲み込みやすい形)に整えられ、喉を通って食道に送り込まれます。

しかし、脳卒中の後遺症などで麻痺があり舌をうまく使えなかったり、唾液の分泌が少ない場合もあります。

このようなときは、つぶしたり、細かく刻んだものにトロミをつけ、飲み込みやすいようにまとめます。

口の中で「もぐもぐ」したまま、なかなか飲み込めない場合もあります。

このような場合は、ミキサーにかけて粘度を調整しながらペースト状やゼリー状にするなど飲み込みやすい形態に整えます。

ミキサー食ではただお粥をミキサーにかけていては、離水して誤嚥にリスクが高まります。

そんなときはスベラカーゼ酵素を使うとまとまりやすくなり、誤嚥の防止にもあります。

「肺炎・発熱を繰り返す」「食事中や食後にむせたり・咳込むことが多い」「食後よく声が変わる」などの症状が見られる場合は、誤嚥(食道に入るべきものが気管に入ってしまう)の可能性があります。

 

誤嚥性肺炎について

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年をとると体に様々な変化が生じ、「噛む、飲み込む」という食べる機能にも影響します。

食べる機能が弱くなると食べる量も減り、体重が減少したり、免疫力も低下するなど基礎体力も衰えます。

なかでも怖いのは「誤嚥性肺炎」です。

これは、食べ物や飲み物など食道に入るべきものが気管や肺に入ってしまい細菌が繁殖して起こる肺炎です。

普段は誤嚥をしてもむせることで気道へ入るのを防ぐことができますが、飲み込む力が弱くなるとむせることなく気道に入ってしまったり、そのままのどに詰まらせて窒息してしまうこともあるのです。

誤嚥性肺炎は一度起こすと繰り返しやすく、手遅れになれば命を落すことさえあります。

予防するには、誤嚥を防ぐこと、口の中をきれいにすること(口腔ケア)、胃から食道への逆流を防ぐこと(食後すぐに横にならない)栄養をしっかり摂り基礎体力をつけることなどが大切です。

 

脱水症について

歳を重ねるにつれ「体力や感覚機能が低下する」「体内に蓄えられる水分量が減少する」ことなど、個人差はありますが、いわゆる老化現象であり避けられないことです。

しっかり食べて、こまめに水分を補給することで、低栄養も脱水症も予防できます。

また、高齢になれば「歯や歯ぐきが弱くなる」「飲み込みにくくなる」こともあります。

こうした食べる機能の低下を見過ごしてしまい、硬いものは食べない、むせやすいものは飲まないなどと、食事の内容が偏ったり、食事や飲み物の摂取量が減り、気がついたときには「低栄養」「脱水症」になり、入院しなければならないというケースは少なくありません。

食形態の工夫、口腔ケア、リハビリ、食環境を整える などにより脱水を予防しましょう。

脱水予防で経口摂取できる方に提供している商品は大塚製薬のOS-1と

ニュートリー(株)アイソトニックゼリーです。

OS-1は言わずとしれた商品ですが、アイソトニックゼリーは病院で良く出されています。

お年寄りや嚥下力の低下した方でも、スムーズな水分補給ができます。

  

食事の姿勢について

食べる時の姿勢は、やや硬い座面の椅子に骨盤が安定するように腰かけ、足の裏が床に着き、テーブルの上に無理なく両肘を置ける高さが理想です。(図1)

 

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食器をつかむことができなくても、手のひらをテーブルの上に置ければ、体を安定させるための支えになります。(図2)

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ベットから移動できない場合は、足の裏が床に着くようにベットの高さを調整し、テーブルの高さも合わせます。(図3)

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ベット上で食事をする場合、両足を伸ばした状態になりますが、膝下のベットを上げたり、クッションを入れたりします。(図4)

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食事の介助方法について                    

本日のメニューを伝えましょう。

盛り付けを見せたり、献立を説明して食欲を引き出しましょう。

目からの刺激や料理のにおいは脳に伝わり、食べたいという意欲を誘引し、唾液が分泌されるなど体の中で食べる準備が始まります。

食べ物を口に持っていくときは、必ずスプーンを目の下でいったん止めて見せてあげてください。

スプーンは、ティースプーンが目安。 

スプーンはあまり大きくなく、あまり深くないものを使用します。一口は多すぎても少なすぎても飲み込みにくいものです。ゴックンと一口で飲み込めるくらいの量がよいでしょう。

 

スプーンはその方の食べる位置から。

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気が付かないうちに自分が食べている感覚で、スプーンを本人の頭の上から差し出してしまうことがよくあります。本人が食べていることを再認してスプーンをテーブル面から運びましょう。(図7)

スプーンを口に押し込まない。

スプーンの背を下唇に当て、口が開くのを待ちましょう。反応が鈍い場合は、スプーンの背で唇の周りを軽く押したり、やさしくたたいて刺激を与えましょう。

唇が動くまで、スプーンの位置はそのままで。

口が開いたら、舌の真ん中のくぼみの上にスプーンを置きます。本人が口を閉じて、唇で取り込もうとしてから、ゆっくりやや上に向かってスプーンを引き抜きます。

 

食事が始まったらリズミカルに。

 

「ゴックン」と飲み込んだことを確認したら、次のスプーンを運べるようにテーブル面で用意して待っていましょう。食事が始まったら、主食、おかずとリズミカルに、本人の食べるペースを促すように60分以内ですませるのが目安です。

食べた後はすぐに横にならない。 

食後、最低でも10~15分は座っていましょう。のどに残った食物が気管に流れ込んだり、食べたものが胃から逆流し、肺へ入ってしまう場合があります。その間に口腔ケアができれば理想です。

 

とろみの付けすぎに注意しましょう

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水は、目に見えない小さな分子がたくさん集まってできています。

分子と分子は付いたり離れたりが容易にできるので、水は「サラサラ」と自由自在に形を変えて流れることができます。

 

実はこの「サラサラ」が、飲み込む機能の弱っている人には、むせやすい飲み物になってしまいます。

 

一見、コップの中やスプーンの上ではまとまってみえる水ですが、絶えず付いたり離れたりしていて、口の中でもまとまっているようで、実はバラバラになりやすいのです。

水を飲んでむせるのは、このバラバラになった分子の一部が、のどの別れ道で気管に入ってしまうからです(図8)。

そこで、この分子がばらけず一体となって食道へ流れていくように、とろみをつけたり、ゼリー状にすることで、飲み込みやすい形態に変えることができます。

 

 

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